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うすいビールを飲み干して鳥たちはまた飛んだ
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 何とかいう、その人間について、彼を知る者に尋ねるとあまり統一性の無い答えが返ってくる。






  「ああ、彼なら暫く前に旅路を共にしてね。聖都語が達者で、はは、地図作りは僕の趣味だがね、なかなか解ってくれる奴だった」
  「あいつめ、ひどい奴さ、飲んだくれても悪絡みするくせして、酒切らすとまあー機嫌が悪くなるんだから」
  「おかしな子でね。ろくに言葉を喋りゃしないのさ。なーに言って聞かしても、くすくす笑ってばっかりで」


 かれらが彼に出会った場所はてんでばらばらで、一体どんな手段を使ったのかと思うだろうが、
 それでも道すがら歩いて別れたとか船に乗せて見送っただとか、実に地に足のついた移動の仕方はしていた。
 時々うっかり転移魔法の罠にはまったり、はぐれドラゴン・ライダーと出会っては地図を跨いだ移動をしながら、
 それでも彼は自分の足で歩き回った。
 だから相応の時間は経っていて、それに彼は人間だから、使った時間に相応の年は取っている。

「そうですね、、、、スパさんはとても大人」

 たおやかな声が囁いた言葉が指したのは、後に続いた言葉からも、直接その人間の年齢とはとられなかった。
 少女が涙と、彼女の生きてきた静かな世界に視界を奪われているのを好い事に、男はふと口の端を吊る。



その人間は、自嘲などする性根ではない男だった。
嘆く暇があれば喉に指を突っ込んで、己の体を巡る神経毒を吐いては、
代わりにその分酒を飲んだ。
毒が抜けるたびに思考と舌が結びついていくのが解っても、
酒を口実に言葉を怠けさせて面倒事をかわす。

この旅の連れの一人がこの場所の空気にあてられておかしくなった頃、
たまたま男は一人、林の奥で体内の毒を吐き倒した後だった。
口直しの酒を入れる間も無く巻き込まれたわけで、男ははからずも本性を晒す事になった。

鳥瞰的で暢気ではあるが、もともと身近な煩い事には短気な男だった。

だからあの時も、あの時も、
いや、この話は、今はやめておこう。



その土地というものは、概して、訪れるその時には何がしかの危機を孕んでいるものであって、
それはその土地にとって、またその世界を共有するあらゆるものたちにとって確かに危機であって、
たとえば滅亡することも、敵を見出し立ち向かうことも、あるいは危機に意志思想があるのならば服従することもあるだろう、
その引き金はいつでもその土地にあって、いつでもそれを目聡く見つけるものがいる。

それはいつでも狭い箱庭の中の戦争だった。
隣の庭に移ればあんなにも混沌を招いていた危機は風の噂にも無く、しかし、全く異なる脅威が人々の心を支配している。


不安に押し潰されそうになりながら、唇を引き結んで少女は唸っていた。

  家。掟。
  蝶神様。

自らが「あおり」を受ける前、怪人は首を傾げていた。

  マナ。
  エキュオス。

女王蜂は、働き蜂は、疑いもせずに謳っていた。

  勝利。繁栄。
  誇り。愛。正義。




「なあ、     」

醒めていく酔いはらしくなく、気味の悪い角度に口の曲げる。
誰に掛けたのか分からない、呟きはスカーフの中に留まって、

「やっぱり、ひとの思いつく限りの“世界”なんてもんは、意外と小さいぜ」



リップ・シンキング・スワン・ソング



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