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うすいビールを飲み干して鳥たちはまた飛んだ
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「ぷー」





 
アップ・イン・マーベルズ・ルーム



「おおい、チビやー」

てっぺんに雪を残した、たくましい大木の下。
山の主が髭つきの顎を上げて、何やら呼び掛けています。

「…臍を曲げちまうような事でもあったかね」
「さ、さあ…。昨日の晩までは何も変わったところは無かったと思うのですが…」
「はっ!スパっちもしかして…蜜柑食べちゃったから怒っているのかい!?」
「そんなに食い意地張っちゃいないさ、気に病むこたあない」


そう、姿が見えないと思ったら、スパルヴィエロは枝の上。
猫のように手足を縮めて丸くなっているけれど、高いその場所が恐いわけじゃあありません。
おやおや、頬まで膨らませて、なんだかご立腹の様子です。
季節がぐるり一周り巡ってまだ日はすこうしばかり。
甘酒に舌鼓を鳴らしていた時のご機嫌はどこへ行ってしまったのでしょう。

「なあチビよ、何がお前さんの嫌いな物なのかは教えちゃくれんかな。
お前さんが逃げっちまうほど好かん物で、儂らが見当もつかんようじゃあ困るだろう?
知らんままにまた機嫌を損ねちまうかもしれん」

山の主の傍らでは、蝶々の少女が心配そうにきょろきょろ。
向こうでは大きな体の怪人が、大きな声で連れに説明しているようでした。

スパルヴィエロもしらんぷりはしません。


「とおぎたいかい」


両手の上に顎を乗せて、いつの間にやら蜂から猫になったのでしょうか。


「おれは、でんけぇの」


小鳥のようにぱちくり目を瞬いて、少女と山の主が顔を見合わせました。
スパルヴィエロがいやがっているもの。
この島にやって来た人々が、目的や目標は各々に手合わせを行う大会。
誰が催しているのかなんて知れた事ではないけれど、以前から行われているらしいそれは、
なかばお祭りに近いものだと伝え聞いているひとも多いでしょう。

そろそろ開催されるのだとか、そういった噂は確かに、
仲間のお喋りの中にあったかもしれません。

「おおい、何もあそこに放り出そうなんざ思っちゃいないぞお?
しかしそうか、あの大会の話が厭だったのか。ちいと意外だが成程承知したぞ。
分かった分かった、新しく約束しよう。チビはあれにゃあきっと出ない。違いない」

そうら、降りておいで、と山の主。きっと子供の駄々には慣れたものです。

「すぱさん、甘酒がまだお鍋にありますから。温めておきますから、召し上がってください」

とどめに少女の、すこうし困ったにっこり笑顔。
二人はスパルヴィエロがどうしていやがるのか、
なにがきらいなのか、何も尋ねる事はしないまま。

「たっぷり温まって、ご機嫌を直してくださいね」



さて、それから闘技大会は、いったいどうしたのでしょう?
スパルヴィエロは結局、甘酒をおいしく味わって、
仲間の武器を弄ったりして過ごしていたようです。


何やら大きな叫び声や、爆発に近いまばゆい光や、
もうひとつの物語があったりなかったりしたようだけれど、それはまた別のお話。

 



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