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うすいビールを飲み干して鳥たちはまた飛んだ
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 草むらは、川の流れや崩れた壁を挟んで遠く続いているように見えました。


 
 
 
 
ディジー・デイムの欠伸
 
 
 
 
 山で暮らしていた山の主は、歩いているあいだに踏みしめるのが
草でも砂でもあまり気にしません。
 それは小さな連れも同じようで、なびくマフラーや大きな尻尾にじゃれながら、
平気でついて行きます。
 
「結構いるなあ」
 
 見回して漏れた呟きに、連れはこくりと頷いて同意しました。
 一斉に、とまではいかなくとも、
遺跡の入り口に居た冒険者達が探索しているのです。
 連れ合いにお互いを確認しているだけとはいえ、
それほど静かな旅路でもないのでした。
 
「ま、これならチビ達が泣いてたって誰かが気がつくだろうし、いいかねえ」
「いい?」
「苛められたり、攫われたりしないって事さ」
「ほお」
 
 ハーブのような葉っぱを食みながら、連れは片眉を上げて相槌を打ちました。
 そう、かれは山の主と反対の事を考えていたのでした。
 でも、なるほど確かに。
 これだけの人がいるのなら、
子供を泣かす者もいれば、泣き止ます者もいるでしょう。
 
 
 泣き声が近くなってきました。
 高い声はきっと女の子でしょう。
 これだけ泣く元気があるのなら、(無事ではないけれど)無事に違いありません。
 
「お、いたぞいたぞお」
 
 山の主が声を上げたので、連れもその肩から顔を覗かせました。
 するとどうでしょう。二人の傍らを通り抜けて、もう目の前には別の背中。
少なくとも子供よりは背の高い人々のものでした。
 肝心の子供の姿が見えないので、連れが短い首を伸ばすと、山の主が笑いました。
 
「ほうらな」
 
 女の子の姿を見つける前に、二人は顔を見合わせました。
 連れが、若草を映したような目をぱちくり瞬きますが、
山の主は機嫌良く人集りに向き直りました。
 
「そうそう悪い奴なんかおらんもんさ」
 
 考えを見透かしたような言葉にも、連れは片眉を上げるだけ。
 けれど、元より笑みがちの口の端をにやりと上げて、背中から飛び降りました。
 
 
 
ところで連れは、そこで初めて名前らしい単語を言いました。
山の主に不意に告げてから後に、涙を零す女の子にも言っていたから、
きっとそれがかれの名前としてはたらく言葉なのでしょう。
 
 
歩きながら大きな声で泣いていた女の子が、あんまり小さく見えたので、
さすがの二人も自分達のお酒で励ます事は出来ません。
山の主がひらめいて、なにやら用意を始めた頃、
連れもまたなにやら準備をしていました。
かれの隣では、女の子の泣き声に集まった別の旅人が、
同じように葉っぱを集めていましたが、
向こうの連れは皆女の子の話を聞いていたから気がついていません。
 
「ようじょ、みてみや、いないいなあい…モッサァァァァァ!!!」
「ほら泣きやんでいないいな~いモッサァァァァァ!!!!!!」
「いやあああああああああああぅ!!!!!!」
 
 
その場は、げんこつがふたつ落ちただけで済みました。
 
 
 
 “スパルヴィエロ”は笑っています。にやり、くつくつ、笑っています。
 そういえばかれも突然現れて、なんの話もなく旅について来ているけれど、
 いったいどこから来てどこへ行くつもりなのでしょう。
 
 
 けれどもまずは目の前の女の子ににっこり笑ってもらうまで、
 首を傾げる謎にはいったん蓋をして、
 
 さあ、旅の続きを始めましょう。
 
 

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