うすいビールを飲み干して鳥たちはまた飛んだ
スパルヴィエロは、甘ったるい香りが肺の奥まで満たしているような、そんな気分です。
いつもなら、そんなふうになる前に辛いお酒を空けてしまうのだけれど、このときのスパルヴィエロはそうしません。
穏やかで長閑な山の道です。若い葉っぱの緑が透けて、お日様の光がちらちら、風に揺れています。
人や馬車が通るのでしょうその道が、それでもどこか無造作に見えるのは、
四方八方好き勝手な方を向いて開く花のせいなのでしょう。
「あんた、どっからきたの」
スパルヴィエロがゆっくり瞼を押し上げると、覗き込む猫目と目が合います。
のびをしたまま戻るのを忘れてしまった思考がこれもまたゆっくり、立て直すのを待たずに、
スパルヴィエロはにやり、笑います。右の腕だけ持ち上げて、頭と反対の方を指差して。
「あっちのほー」
「いきだおれ?」
「んー」
「たてる?」
「んー」
膝にちょこんと両手を置いた女の子は、この自由に咲く花から編んだのでしょうか、
やわらかな赤毛に白い冠をのせています。
スパルヴィエロは、足をぽーんと空に振り上げて、降ろすのと一緒に体を起こします。
「とおかったな」
女の子が、村の宿屋まで案内してくれると言うので、一緒にゆっくり歩きながら、
スパルヴィエロは息をするみたいに言いました。
女の子が、大きな猫目をひとつ瞬いた頃、スパルヴィエロは、
「とおかったー」
スパルヴィエロは、わらっています。
どうしようもなく疲れたふうに、ほんのちょっぴりさびしそうに、親友に会ったようにうれしそうに、
雛鳥が死んだようにかなしそうに、本を書き上げたように満足げに、
スパルヴィエロは、わらっています。
ジャー・ヘッドの鼻歌
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