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うすいビールを飲み干して鳥たちはまた飛んだ
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「ひひ」 
 
 

 山の主は昨日増えた連れを振り返りました。 
 かれにとっては広いのでしょう山の主の背中に、
ヤモリか何かのように貼りついています。 
 だから山の主がただ振り返っても、同じ高さには誰もいません。
長閑な道の向こうに別の旅人の姿が見えるだけです。 
 
「おやぁ?いなくなっちまったのかー」 
 
 
 
山の主が道中、探しているのは子供です。優しく守り共に暮らしていた子供達です。 
この新しい連れも、こうして背中に隠れて含み笑いをしながら、
姿を探す様子を楽しむような子供ですが、
主の山には居ませんでした。 
 
「こども?」 
「そう。見んかったかなあ」 
「そのへんようけおるやん」 
「鎧は着とらんと思うんだがな。あんな大きな武器も、持って…持っていたかなあ」 
「しらんちゃ」 
 
山の主が山を下りて、子供達が飛ばされたのではと
目星をつけた場所に着いた時の事でした。 
緑の多いその場所は、人の多さの割りに妙に居心地の良い不思議な空気で、
隣り合わせた吟遊詩人の曰く遺跡の入り口なのだそうです。 
つまり賑やかに交渉したり勝負を持ち掛け合ったりしている人々は
みな冒険者なのでしょう。 
子供のような姿も見掛けますが、
その瞳は老成した思慮深さか、百戦錬磨の豪気さを宿しているばかり。 
勘が外れたかとぽりぽり頭を掻いていたところに、かれは現れました。 
木の枝に膝を引っ掛けぶら下がって、
逆さに垂れ下がるスカーフの余りが、蜂の羽根のようでした。 
 
「そいぎな、さがすんてつだっちゃるけぇそのさけちょうだいや」 
 
そうして見せられた空の酒瓶には、
びっくりするくらい高い度数のラベルが貼ってありました。 
 
 
 
 始まったばかりの旅は、緑の遺跡の迷子探し。 
 戯れながら歩いた目の前、開けた平原に青い空。 
 顔を上げた山の主に、少し遅れて背中の連れで、揃って耳を澄まします。 
 
「――泣いとる子はどーこだあ?」 
「どーこだぁ」 
 
 呼び掛けてみても近くに子供の姿はありません。 
 穏やかな風に乗る声を探して、ちらほら道を同じくする人影を、
二人はのんびりと追うのでした。 
 
 
 
若草にミント・ジュレップ


 
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